全日本DM大賞のこと

進研ゼミ、あるいはベネッセの通信教育講座が切って放せない絶対的な存在が販促DM。

アニメDVD、教材の見本、そしてマンガに代表されるベネッセのDMマーケティングが始まったのは1980年代中期のことだったそうです。

そんなDM広告のパイオニアともいえるベネッセが、その年の中で最も優れたDM広告を決める重賞企画に出場しないいわれはありません。

というわけで、日本におけるDM広告の祭典・全日本DM大賞でのベネッセの戦績の紹介をしたいと思います。

まず簡単にこの企画の歴史について触れましょう。

1986年、日本の郵便が国営だったころ、つまり日本郵政公社だったころにこの表彰はスタートしました。ので、最初は最優秀賞の名前が「郵政大臣賞」でした。というか、ベネッセのDM事業スタートの時期とダブりますが、それくらい、国内でDM広告に勢いが出てきていたのだと察せられますね。

さて、国内でもかなり早い時期からDM広告に目をつけたベネッセはこの賞でいったいどれくらい大賞を取りまくっていたのでしょうか?

……それが、なんと20年以上グランプリに選ばれてないんですね。第15回で郵政大臣賞から総務大臣賞に変わっても、第18回で日本郵政公社総裁賞に変わっても取れていません

この全日本DM大賞、郵政民営化がなされた2007年の第22回に大幅なリニューアルをしてるみたいなんですが、それまでの過去記録はグランプリ以外ネット上で公開されておらず、全日本DM大賞年鑑という年鑑もその年からの発行ということで、過去の開催状況をそれ以上追うことができません。どんな開催形態だったのかも伺えないんですよね。

で、郵政民営化がなされた第22回。その節目、グランプリの名前が「金賞 グランプリ」とリニューアルされ、ホームページが立ち上がり、年鑑の発行が始まるという急進の年、ベネッセはいきなりグランプリを受賞します。いきなりすぎて何が起こったかわかりません。長年の企業努力が、郵政民営化と同時に実ったみたいです。

入園準備ということでこどもちゃれんじ関連事業なのかなーと思うのですが、掲載されてる紙面を見るとあんまり関係なさそうにもみえます。

さらに、この年は高校講座の方で銅賞も受賞していました。ゼミマンガです。

ところでこれ、見るとわかるんですけど、広告を制作した企業様の名前もわかるようになってます。

なので、この賞はベネッセの広告事情が、より鮮明にわかる貴重な場でもあるんですね。

また、受賞に至らなかった「ファイナリスト」の項目には「こどもちゃれんじぷち」の文字があります。金賞GP、銅賞の2冠とファイナリスト1個。なんだベネッセ、何があったんだこれまでの不調が嘘のようです。

これまで一度も受賞していなかった中で、受賞タイミングが本当に唐突かつ改編と重なるので、何らかの組織の力すらも疑ってしまう……!

では次の年……第23回は……

第23回

もう言い逃れできねえ!!!

組織の力だ!!!

……冗談。たぶん積み上げてきたものが一気に花開いたんでしょう。なんと2年連続の「金賞・グランプリ」の受賞を果たしてしまいました。

しかも、トイパンでの受賞です

さらに、これだけではありません。

今までの雪辱を果たすかのように、チャレンジ1年生のDVDを使ったDMで、グランプリではない金賞、銀賞、銅賞の三冠を達成してしまったのです。な、何事だ!?!!?!

このDVDというのは、そうです、はてなようせいの登場するあのDVD群です。あと「だいぼうけん」とかの。やばすぎるだろ……。トイパンとはてなようせい、ネット民の好きそうな組み合わせです。

しかもちゃっかり中学講座やDSソフトの広告のほうも銅賞を獲得しています。

ファイナリストのところを見ると「たまひよSHOP」というベネッセ公式通販の広告が進出していたこともわかります。合計で六冠。

つ、強すぎる。本当に何があったんだ

審査員ははてなようせいの可愛さにあてられて狂ってしまったのかもしれません。しゃーない。

第24回

さて、流石に懲りたのか次の年のグランプリはベネッセではありません。一安心……と思いきや金賞を2つ受賞しやがっています

しかも、「DM大賞を糧にシナリオ強化で更なる大勝利!」とか言っています。完全にうかれている……。

銅賞は高校講座とこどもちゃれんじの二つ。また、ファイナル進出は四つ。

なんかもう面倒臭くなってきたのでここからはダイジェストでいきますけど、今までの停滞はどこへやら。

第25回、かっこいい1ねんせいゆきのぼうけん(3Dメガネのやつ)で金賞を1つ、こどもちゃれんじぷちで銀賞2つ、中学講座で銀賞1つと銅賞1つを獲得。

第26回、学習机・ランドセルの通販広告で金賞、こどもちゃれんじぷちで銀賞とファイナリスト1件を獲得。

第27回。ここで初めて金賞落ちしますが、BE-GOの広告(おためしCD-ROMのやつ)で銀賞と銅賞を受賞。

第28回。こどもちゃれんじEnglishで金賞、たまひよ〈befa!〉という妊婦向け通信講座の広告で銀賞を受賞。

もう完全に常連になったベネッセ、講評で「常連」と言及されるまでになっていました。

しかし、第29回で初めて、一個も受賞せずに終わります。

その年は2015年の大賞で。2013年11月1日から2014年10月31日までの広告を対象としています。さて、なんとなく理由は察せられましょう。個人情報流出事件ですね。

流石に、DMを送る顧客の情報を3500万件もお漏らししちゃったDM界のしくじり先生を大賞に選ぶわけにはいかなかったでしょうし、ベネッセも広告を自粛・再編したはずです。

DM大賞を糧にシナリオ強化で更なる大勝利!とはなんだったのか。

そういうわけでしたが、その次の第29回ではこどもちゃれんじのDMで金賞を受賞するなど健闘。

ただ、この頃からDM事業を少し縮小し始めます。流出事件を受け、ネットでのマーケティングを重視するようになったわけです。なのでノミネート数も減ります。第30回では0件。

でも、中高講座の広告は強いみたいで、第31回では、新高2生向けと大学受験生向けの広告がファイナリスト。

第33回では、高2生向けで銀賞、高1生向けで銅賞。後者はゼミマンガで、解説文によると「ソーシャルメディアで3000件以上投稿される投稿されるなど話題化し」たと書いてあります。ネットの反響、見てるんですね……。

で、直近の34、35回は一個も受賞がありませんでした。今は36回の応募が終わって審査中なのですが、一体ベネッセは幾つ受賞できるか、注目したいです。

もしかしたらもう応募もしてないのではと少し危惧しているので、元気なところ見せてほしいですね。

トランプおうwzは全日本DM大賞を応援しています。

2021/7/24 作成開始

2022/2/6 公開